被災地にCash for Workを

 現地をみて、これまでの災害対応と同じ事をやっていてはだめだと実感した。被害の量・範囲・規模が阪神淡路大震災と比べても桁違いである。我々防災研究者はだいたい3日ぐらいすれば被災地に物資が届き、救援も行き届くようになる、避難所はだいたい1ヶ月ぐらい、、、といった大まかなイメージを頭に持っている。だから次は何が必要かということを現場の防災担当職員以上に分かっているという自負があるのだ。

だが、今回の災害は違う。明らかにペースが遅い。救援の量と質ともに過去の経験や想定よりも下回っている。普通我々は被災地の外は全く被災しておらず、災害が日本全体の社会経済に影響を与えないという前提で物事を考える。経済学で言うと小国の仮定のようなものである。ところが、今回は15万人いる自衛隊のうち10万人を投入するという。もう青天井ではない。そもそも復旧事業に必要な資材、業者、資金などがどこまで足りるのか?阪神・淡路大震災当時と比較して日本の建設業の市場規模は約半分、労働者は3/4に減少している。そもそも電力すら足りないというではないか。

通常、大規模災害の後は大規模な復興事業があり経済成長を高めるという。一時的に日本株や国債が売られたとしてもそれは通常短期的な影響に留まる。だが、計画停電に踏み切れば生産活動は制限される。当然日本の経済成長は疑問視されるだろう。そのような中で大規模な国債発行を行えば金利は上昇し、日本政府に利払いの負担が重くのしかかる。財務省によれば1%の金利上昇は年間約3兆円の利払いの増加になるのである。このまま原発の事故処理が長引けばどうなるか?正直いって全くシナリオは見えていない、混沌とした状況である。

 しかし、そのような不確実性を嘆いてもしょうがない。我々は立ち上がらなければいけない。現在は救命救助活動に全力を投入することは言うまでもないが、やがてやってくる復旧・復興期に備え、少ない資源で最大の効果を上げる被災地支援策を考えるべきである。そこでCash for Work (CFW) プログラムを提案したいのである。

CFW は、被災者を復旧・復興事業に雇用して、賃金を支払うことで被災者の自立支援につなげる方法である。かつてインド洋津波の被災地、バンダアチェで行われ、ハイチ地震の被災地でも実施された。http://oxfam.jp/2010/02/cash_for_work_3.html

現地を見るかぎり、釜石市の経済活動は完全に停止、市の中心部は壊滅状態ということを考えると、経済活動の再開にはかなりの時間がかかることは間違いない。その間、被災者の収入は途絶えたままだ。

恐らく、従来の枠組みではがれき撤去は自衛隊や民間建設業者、清掃はボランティアというのが相場であろう。だが、今回はこうした資源もどこまで期待できるのか不確実である。対応資源の不足により経済活動の再開まで長期化する可能性もある。その間、被災者はどうやって生活するのか?仕事を失った被災者は援助にすがって生きるか、被災地を離れ新たな職につくかのどちらかしかない。そしてどちらも地域の復興のためにはならない。被災者が自ら働き、地域の復興に貢献し、生計を立てるための仕組みが絶対に必要である。

限られた復興資金が被災者の支援につながる。これは決して思いつきで言っているのではない。世界の大災害はこうした手法を必要としてきたし、今我が国が置かれている状況はまさにそれに匹敵する事態なのである。その意味では、自衛隊やボランティアは後方支援に徹するべきだ。今こそ被災者を見よう。被災者を支援しよう。

永松 伸吾 の紹介

関西大学社会安全学部教授。災害経済学を教えています。現在LA在住。
カテゴリー: 未分類   タグ: ,   この投稿のパーマリンク

被災地にCash for Workを への5件のコメント

  1. 釜石より より:

    地震を受けて東京から釜石に入りました。

    震災以前、釜石では、SMCが一番多くの従業員をかかえていました。
    SMCは遠野にも工場があり、時機を見て操業を開始します。釜石工場
    も、被害がほとんどなかったため、間もなく操業を開始するそうです。

    また釜石・大槌には遠野に親戚がいる方も多く、避難所ではなく遠野に
    身をよせている方も多くみられます。

    私も、先生の御提言に賛成します。地方自治体とSMC遠野工場・釜石工場、
    新日鉄釜石とを窓口として、CFWプロジェクトを推進していくことは可能なので
    しょうか。

  2. ピンバック: 東日本大震災の経済シナリオと必要な対策について | 減災雑感

  3. 山地久美子 より:

    CFWのコメント欄ありませんね。

  4. 山地久美子 より:

     先も伝えましたが、
     西宮市被災者支援システムのように被災地域、被災者全体を対象とする被災者台帳
    の作成が必要です。今後の個人のニーズに沿った支援を行うためにも、家屋罹災者のみを被災者台帳の対象としないことが最重要です。
      総務省が財団法人地方自治情報センターを通じて平成21年1月17日に全国地方公共団体にCD-ROMで無料配布している「被災者支援システム」が個人・世帯いずれにも対応でき有効です。

  5. tabata より:

    同意します。私は私の職場で出来ることをします

コメントを残す